【紹介】
どこまで本気なのか? 本気で「これ」を評価するのか? というギリギリに迫る批評は、それ自体が文学となりアートとなる。自分が生きてきた背景と大きな歴史とをクロスさせる原田の旅は、もはや冗談と真面目さの区別がつかない、深い意味での「本気」へと向かっていく。ーー千葉雅也(哲学者・小説家)
“とるにたらないもの”から、美術の死角を浮かび上がらせる。
クリスチャン・ラッセンをはじめとするインテリアアート、心霊写真、VARやドローンから佐村河内守まで。従来の美術の枠組みの外に置かれてきた数々の作品や事象を取り上げ、それを丹念に論じることを通して美術とは何かを問う。制作と執筆をシームレスにつなげる気鋭のアーティストによる初の美術論集。
【目次】
はじめに――菊畑茂久馬から考える
[第一部]
クリスチャン・ラッセンと日本
VAR、ドローン、心霊写真
著作の重量
One Million Seeings
[第二部]
アンリアルな風景
Waiting for
[第三部]
アール・ローランのダイアグラム
バルテュスを読む
AI化するアーティストたち――佐村河内守論
「広告の時代」のアートとは何か?
[第四部]
裏声が聞こえる――「裏声で歌へ」について
つやま自然のふしぎ館と無美術館主義
ハワイ紀行――波打ち際を歩く
Shadowing
あとがき
初出一覧
前書きなど
誰もが知っているにもかかわらず、「とるにたらない」と決めつけられることによって、誰もが直視してこなかった美術の死角。それを敢えて見つめることによって、盲点の側から「美術」の自画像を浮かび上がらせることができるのではないか──(「はじめに」より)
【著者】
原田 裕規 (ハラダ ユウキ) (著)
1989年生まれ。アーティスト。
とるにたらないにもかかわらず、社会の中で広く認知されている視覚文化をモチーフに作品を制作している。2019年以降は断続的にハワイに滞在し、「ピジン英語」に代表されるトランスナショナルな文化的モチーフに着目。写真、映像、パフォーマンス、CGI、執筆など、多岐にわたる表現活動をおこなっている。
主な個展に「やっぱり世の中で一ばんえらいのが人間のようでごいす」(日本ハワイ移民資料館、2023年)、「KAAT アトリウム映像プロジェクト」(KAAT 神奈川芸術劇場、2023年)、「Unreal Ecology」(京都芸術センター、2022年)、「アペルト14 原田裕規 Waiting for」(金沢21世紀美術館、2021年)。編著に『ラッセンとは何だったのか?』(フィルムアート社、2013年)。受賞に「TERRADA ART AWARD 2023」(ファイナリスト、2023年)。作品収蔵先に広島市現代美術館、日本ハワイ移民資料館など。