‟ページをめくりながら「この手もあったのか!」と少し悔しい気持ちなった。
昭和40年頃から盛り上がり、現在は絶滅寸前の豪奢な客室のラブホを、私は10年ほど前から撮影し続けている。しかしオープン当時のままのものは皆無なので原初のカタチを知りたければ、過去の写真か設計図に当たるしかなかった。しかし廃墟になったものならば、オープン当時とまではいかないが、閉鎖当時のもの、さらに崩れ落ちた部分からはさらに過去のことも知ることができる。
本書で紹介されている物件は経営者が夜逃げした直後のような、保存状態は非常に良いものが多いので、なおさら文化的資料価値を高めている。廃墟なので、一般流通させるには今のご時世的にハードルがどんどん高くはなっているが(嫌な世の中ですね!)、自著とかでも紹介したかった。"(村上賢司/解説より)
昭和40~50年代に列島各地で花開いた「ラブホテル」は、「サカサクラゲ」と呼ばれた連れ込み宿から進化して、アメリカの「モーテル」に影響を受けたりもしつつ、日本特有の性愛空間として定着しました。しかし昭和50年代が終わる1985年には、風営法改正による規制で「ラブホテル」から「ファッションホテル」へと移行。回転ベッドや鏡張りなどの趣向を凝らした部屋は数を減らし、簡素にリニューアルしていきました。
およそ20年の間に威容を誇った昭和遺産ラブホテルは、チープなのにゴージャス。ユーモラスなのにエロチック。時に美しく、時に笑えて、時にエッジの立った独特の性愛文化を繰り広げました。
本書は昭和40~50年代の「ラブホテル」のディテールを、廃墟の中から掘り起こした写真資料集です。
◆目次◆
■CONTENTS
舶来デラックス/花魁ランデブー/装置テイスティー/黄昏モダンシティ/宇宙ラブスペース/特殊シークレット/遊園地パーティー
□消えゆくラブホディテール標本 特殊ベッド/インテリア/エクステリア
□INTERVIEW 那部亜弓
□現役ラブホ愛好家に聞きました!! 逢根あまみ/ONI
□解説 村上賢司
◆著者プロフィール◆
千葉県出身在住。廃墟とラブホテル愛好を二大柱に活動中。2005年から廃墟探索を開始し、千葉工業大学卒業、就職後から国内海外廃墟を巡る。雑誌の廃墟関連記事に寄稿。一方で昭和の性産業に異常な興味をもち、ストリップや日活ロマンポルノ、雑誌収集を楽しむ。愛染シオンという別名で現役ラブホテルを巡るブログを開設する。趣味は映画鑑賞とダンス。著書に『知られざる日本遺産~日本統治時代のサハリン廃墟巡礼~』(2015)などがある。
著者:那部亜弓 デザイン:吉川英男(nout)
発行:八角出版部
判型:A5版 32ページオールカラー
発行日:2019年8月