愛知、京都、沖縄の書き手による非関東圏の映画誌。2024年9月創刊を目指し、創刊準備号発刊。
その名の通り映画評論をテーマに、創刊準備号では偉大な映画監督ゴダールを軸に論考を展開させる。
インタビュー記事では京都玩具映画ミュージアムの館長にフィルムのアーカイブについて掲載。
目次
巻頭言
映像の海の羅針盤として
沖鳥灯
1997年から2002年まで関東圏のミニシアターに入り浸る日々を過ごした筆者。帰郷して20年後、三人の学生たちと映画誌創刊の経緯を述べる。
「暗闇の光を見つめ、映像の星座と自己の倫理を照らし合わせなければならない。」
インタビュー
京都おもちゃ映画ミュージアム 館長:太田米男
取材:藤見実 写真:冬
フィルムのデジタル化事業や、光学玩具の展示、一般に開かれた研究者によるレクチャーつき上映会など、さまざまな事業を手がける「京都おもちゃ映画ミュージアム」。京都在住の藤見が館長、太田米男氏へインタビュー。アーカイヴのお仕事や、古今京都の映画事情について伺う。映画を取り巻く技術的・物質的条件や、映画産業に参加した瓦職人の話など、なかなか聞けない話が盛りだくさん。カメラマン冬による施設の写真を多数掲載。
小特集
ゴダールの世代
ジャン=リュック・ゴダール(1930‐2022)の影響下にあるだろう映画監督四名の論考。
「いま現在誰しもが「ゴダールの世代」なのだ。むろんそのグラデーションこそ問わねばならない。」
映画監督モーリス・ピアラ
FROGS
「彼の名は、ジャン=リュック・ゴダールではない。」
ゴダールより五歳年上のモーリス・ピアラが残した完成度の高い十本の長篇映画を紹介。ピアラ中心にゴダール始め、ドパルデュー、ブレッソン、ファスビンダー、グァダニーノなどを語る。
破壊せよ、とアイラーの亡霊は言った──青山真治論
フォスフォ
「一九七〇年代末に黒沢清と万田邦彦の核のもとで立ち上がった、立教大学自主映画製作サークル、パロディアス・ユニティ」の一員としてフィルモグラフィを開始した青山真治はゴダールと共に2022年逝去。青山作品にデリダ「憑在」で応じ、「一九八九年九月十日」と「一九九二年八月十二日」の日付に共同体のつなぎ間違いの回帰を見る。
映画への憎しみ──『スパイの妻』、アーカイヴと動員とのあいだで
藤見実
強制収容所の記録映像があれば「破壊する」と言い放った『ショアー』の監督ランズマンに対して、絶対にフィルムを見つけてみせると豪語したゴダール。731部隊の記録映像を「捏造」してみせた黒沢清『スパイの妻』は、その系譜にあって、観るものを「動員」してしまう映画の良心を問い直す。 「本論が問いたいのは、事実を伝える映像と、「動員される」ことの関係である──なぜ「映画」は人を動員し、またしないのか。また、人を動員したりしなかったりする映画は、いかなる良心を持ちうるのか。」
人間と映画の神的暴力──ゴダール、北野武あるいは大杉漣
沖鳥灯
ゴダールと北野武の「映画史の符牒」からベルモンドと大杉漣の「人間的差異」へ。大杉漣の人間に留まる演技にヴァルター・ベンヤミン『暴力批判論』の抽象的な概念「神的暴力」を見出す。
挿絵:白濱 川田はらいそ
装幀・装画 白濱