香港民主化デモで逮捕された匿名の日本人男性による、消された政治的なストリートグラフィティの写真をまとめたZINE。
逮捕前後のデモの様子や民衆の抵抗としての落書き、自由を諦めない香港の人々の置かれている状況を記録する一冊。
2019年8月、"graffiti buff"つまり、塗りつぶされたグラフィティを撮影するため香港を訪れた著者が、逃亡犯条例反対を含む五大要求を訴えるデモ弾圧に巻き込まれ、武装警官に逮捕、拘束された際の記録。
生々しい体験を綴ったテキストを香港のグラフィティ写真とともに掲載した、匿名による自費出版物。
ストリートでの催涙弾の発砲、武装警官による暴力的で手当たりしだいの逮捕、不条理で悪夢的な拘束と取り調べ。SNSやネットニュースで目にした海の向こうの騒乱が、解像度を増し体験として迫ってくるのは個人目線のZINEならではの力。
なによりこのZINEの存在そのものが、流れ過ぎるタイムラインや、すぐに更新されるネットニュースのように消されることに抵抗するグラフィティのよう。
【本文より】
私は数年にわたって「消されたらくがき(graffiti removal)」を求めて世界各地へ出向いて撮影を続けている。
ストリートアートとして認知されたグラフィティーの面白さを今更語ろうとは思わない。それとはまた違った側面として「graffiti removal」を捉えると、どこか残念だけど不規則で危うい美しさがあり、哀愁漂う佇まいと、なんと言っても一期一会のご縁に魅了された。
こんなことを始めてしまったばっかりに普段から壁ばかりに目がいってしまう癖がついてしまった。
8月31日、私は香港島にいた。
6月から続くデモで派生した「graffiti removal」を撮影するためである。
~中略~
ロボットのような武装警官達から暴行された時本当に恐ろしかった。
両手を上に挙げ降参を意味するポーズを取っていても暴行は止まなかった。
なぜ暴行を受けなければならないのか理解できなかった。
その後…
再出頭を前にサポート団体から弁護士の支援をいただき、2どの保釈延長とSDカードの抜かれたカメラ2台の返還を経て、3度目の出頭の為に降り立った香港国際空港で入国を拒否され、深夜の便で強制送還となる。翌日出頭できず。
担当弁護士と香港警察の間で、次回出頭日の確認の最中に「covid 19 騒動」が始まり、現在に至る。
香港警察からの連絡は今日現在ない。
9/1で保釈1年を迎えることになる。
保釈中