紹介
汪兆銘、殷汝耕、王克敏、梁鴻志。
戦後、「漢奸」とされた者たち。彼らの行動は、和平という名の降伏に過ぎなかったのか!?
卑劣なる売国奴か? 火中の栗を拾った「愛国者」か? いったい、彼らは何をしたのかを明らかにする。
満洲国以外にもあった、闇に葬り去られた政権が最新研究で甦る!
1931年の満洲事変以後、日本が中国大陸へ進出する過程で中国人(または満洲人・蒙古人)を首班とする現地政権がいくつも生まれた。
それは、まるで操り人形のように日本側の意のままに動いたため、親日傀儡政権(中国語では偽政権)と呼ばれた。
日本が中国占領地を統治するのに必要不可欠だったその存在を抜きに、日中戦争を語ることはできないが、満洲国以外は光があたっていない。
最新研究に基づく、知られざる傀儡政権史!
「研究を始めると、中国側はやはり漢奸や傀儡政権は悪であるという前提で論じられているため、客観的分析に欠けていることがわかりました。これは戦争で被害を受けた立場であり、かつ現在の政治状況では、そのように論じてもやむを得ない事情があります。
一方、日本側は、実証面では中国側に勝っていますが、特定の漢奸や傀儡政権に関心が集中し、全容をとらえるような研究が不足していました。欧米の研究は、二〇〇〇年代以降になって盛んになってきましたが、日中の研究の蓄積にはまだ及びません。(中略)
本書をとおして、漢奸たちの本心はどこにあったのか、彼らはなぜ傀儡政権を建てて日本に協力したのか、傀儡政権では何が行われていたのか、日本軍は漢奸と傀儡政権をどう操っていたのかという点を明らかにしていきます。」
※本書は2013年7月に社会評論社より刊行された『ニセチャイナ』を再編集し、最新研究を踏まえて加筆修正をしたものです。
目次
はじめに
漢奸/漢奸と傀儡政権あっての日中戦争/漢奸と傀儡政権の真相を探る
第一章 冀東防共自治政府(冀東政権)
冀東非武装地帯の設置/華北分離工作、始まる/国民政府と距離を置いていた人物たち/冀東防共自治委員会の成立/冀察政権の成立と崩壊/冀東政権は「殷汝耕ファミリー」が中枢を握っていた/満洲国と手を結ぶ/国際問題となった冀東特殊貿易(冀東密貿易)/アヘン専売はわずかな利益にしかならなかった/反共政策/冀東銀行の創設と銀行券の発行/名古屋汎太平洋平和博覧会へ出展し、日本へアピールする/通州事件
第二章 中華民国臨時政府(華北政務委員会)
日中戦争の勃発と第二次国共合作の結成/日本人顧問は治安維持会のあらゆる業務に 干渉した/河南省自治政府/山西省臨時政府籌備委員会/済南治安維持会/青島市治安維持会/華北新政権の樹立を狙う候補者たち/王克敏は熟考の末、要請を受け入れた/中華民国臨時政府の設立/民衆工作を担った中華民国新民会/新民会は一九三九年に変容した/中国聯合準備銀行(中央銀行)を新たにつくる/国策会社による華北資源開発/拡大する辺区/王克敏暗殺未遂事件/治安軍(華北綏靖軍)は「お荷物」扱いされた/中華民国政府聯合委員会/天津英仏租界封鎖事件/傀儡ぶりを露呈させた天津水害/華北政務委員会へ改組する/ある程度「成果」を挙げた治安強化運動/歴史的文物の破壊に繋がった金属献納運動/日中和平実現を目指したスチュアート工作/華北政務委員会、崩壊す
第三章 中華民国維新政府
日中全面戦争と「南京大虐殺」/小さな傀儡政権、治安維持会と自治委員会/南京市自治委員会/杭州自治委員会/太倉県自治委員会/丹陽自治委員会/嘉定自治委員会/上海市大道政府/二転三転した中華民国維新政府の設立/「ホテル政府」と揶揄される/抗日ゲリラ、抗日テロとの戦い/親日民衆団体を整理統合する/国策会社、中支那振興株式会社/失敗に終わった華興商業銀行/維新政府は事実上の財政破綻に陥っていた/里見甫とアヘン密売/維新政府の解消
第四章 中華民国国民政府(汪兆銘政権)
汪兆銘は国民政府ナンバー2だった/日中断交/日中和平工作が始まる/汪兆銘、重慶脱出/成立前から傀儡政権と非難される/地方支配は限定的だった汪兆銘政権の統治機構/華南の傀儡政権--海南島の場合/特工総部とCC団の闘争/清郷工作/政権宣伝部長はゲッベルスと比較された/法幣の支配を破れなかった経済政策/アヘン専売から禁絶への転換/日本から租界返還と治外法権撤廃を勝ち取る/汪兆銘死す