【まえがきなど】トライバルタトゥー
現在、僕は黒一色のブラックワークという大きな括りの中の、「トライバルタトゥー」というジャンルを専門としている。トライバルタトゥーとは文字通り「部族のタトゥー」のことで、主に狩猟採集によって生活し、いまだ文字文化を持たないような少数部族において、成年の通過儀礼、あるいは身体装飾の一環として、伝統的に施されてきた文身の総称だ。あえてトライバルと称しているのは、近代以降に発生した現代タトゥーと区別するためだ。たとえば日本においては、江戸時代に浮世絵をベースに発祥した和彫りが現代タトゥー、アイヌ民族や琉球民族が二〇世紀前半までおこなってきたシヌイェやハジチなどの文身がトライバルタトゥーとなる。もちろん、日本列島外の世界各地にも広くトライバルタトゥーの伝統はあったし、今もなおある。
一九九〇年代にはボルネオ島の文様をベースとするクレイジートライバルが世界的に大流行したため、
トライバルタトゥーと聞くとまずクレイジートライバルの文様ばかりを思い浮かべる人が多いかもしれない。太い黒線が何本か集合し、流れたり、絡み合ったりしている、読めない習字のような、あるいはトラやシマウマの模様のようなデザインといえば分かるだろうか。が、それはあくまでも一地域のトライバルタトゥー文様の現代的なアレンジのパターンに過ぎない。実際のところ世界にはもっと多様で多彩なトライバルタトゥー文様が存在しているのだ。(プロローグより抜粋)
著者プロフィール
大島 托 (オオシマ タク) (著)
1970年、福岡県出身。タトゥースタジオ「APOCARIPT」主宰。
黒一色の文様を刻むトライバル・タトゥーおよびブラックワークを専門とする。世界各地に残る民族タトゥーを現地に赴いてリサーチし、現代的なタトゥーデザインに取り入れている。2016年よりジャーナリストのケロッピー前田と共に縄文時代の文身を現代に創造的に復興するプロジェクト「縄文族(JOMON TRIBE)」を始動。
KENTA UMEDA (ウメダ ケンタ) (写真)
1985年、東京都出身。写真家。
現代の祈り、異教、踊りと祭り。タトゥーを入れたことでタトゥーの入った身体に興味を持ち縄文族の撮影をおこなう。